突然ですがクイズです。

パンツにはブリーフ、トランクス、ボクサーパンツといった種類がありますが、この3種のうち、最も古くからあるのはどれでしょう?

え? 「もちろんブリーフだろう」って? ブーッ。残念。

それならボクサーパンツ? これもブーッ。

正解は、派手派手イメージがあるトランクスなんですね。意外でしたか?

パンツの歴史をひも解いてみると、「へー、そうだったの」と言いたくなるような事実が他にもいっぱい。ボクサーパンツの生みの親があの有名ブランドだったり、パンツの流行に殺人事件が絡んでいたり……

今回のフリパンラボでは、こういった意外なパンツの歴史をご紹介したいと思います。

その昔、日本人だけでなく、欧米の人たちもパンツを穿いていませんでした。昔といってもそれほど遠くない時代、産業革命があった19世紀頃のことです。近代の幕開けとされているのがこの時期ですが、その頃まではまだパンツというものは存在していなかったんですね。

では、その当時、服の下に何を着ていたのか?

ユニオンスーツと呼ばれる、手首から足首までを覆う、つなぎのような下着を着ていたんですね。調べてみると、男性、女性、子供を問わず誰もがこれを着ていたようです。

アメリカ「シアーズ・ローバック」の通販カタログに掲載されたユニオンスーツ/引用元:Wikipedia

ちなみに、現在でもアンダーウェアで有名なヘインズ社(Hanes)は、ユニオンスーツの最大手メーカーでもありました。

ところで、ちょっと想像してみてください。このユニオンスーツ、着たり脱いだりするのが面倒臭そうじゃありません? 当時の人々もやはりそう感じていたようで、1910年、ユーザーの声を反映したと思える革命的な出来事が起こります。
カルマーズ紡績会社というメーカーが、ユニオンスーツを上下にぶった切って、シャツとパンツ/ズロースに分けてしまったのです。これなら脱ぎ着しやすく、トイレに行った時もラク。2つに分けられた「下」の部分はショートパンツのような形になり、これが現代のパンツの原型になったと考えられています。

ちなみに、この時生まれたパンツはゴム入りではなく、腰回りを紐で結ぶもの。その後1923年になると、ボクサーのユニフォームであるゴム入りのトランクスを真似て、パンツにも同様のゴムが付けられました。それがさらに、現代のトランクスへと発展したのです。

ブリーフというものが生まれたのはトランクス誕生より後で、1935年1月19日であると言われています。当時、乗馬などをはじめとしたスポーツをする際に、陰部の揺れを防ぐために着用する股間用のサポーターがありました。これに目をつけたのが、ヘインズ社のライバルメーカー、クーパーズ社でした。

クーパーズ社はさっそくこのサポーターを日常用にデザインしなおし、「ジョッキー」という名称で売り出しました。その売り出し初日が1935年1月19日。なのでこの日が、ブリーフの誕生日とされているわけです。

(実はブリーフの発祥についてはもう1説あり、ヘインズ社が1932年に発売したニット素材のパンツ「スポーツ」がブリーフの原型だという説もあります)

ちなみにクーパーズ社の「ジョッキー」という名称は、乗馬用の股間サポーターであるジョックストラップから来ています。

ジョックストラップを着けた当時のボディビルダー/引用元:Wikipedia

こうして生まれたブリーフは、めちゃくちゃ売れました。シカゴのマーシャルフィールズ百貨店で初めて売り出された日、午前中に600着が売れ、その後3カ月で合計3万着が売れたそうです。

また、イギリスでもブリーフは大流行し、1948年のロンドンオリンピックでは、イギリス代表の男性選手にブリーフが1着ずつ配られたといいます。

日本にブリーフが入って来たのは1950年代(昭和30年代)。それまでふんどしや猿股しか穿いていなかった日本の青年にとって、ブリーフは、初めて触れる西洋のパンツでした。

日本でもいっとき大流行したブリーフですが、その間トランクスは、と言うと、はっきり言って日陰者でした。ところが、70年代に入ると、ブリーフとトランクスの地位が逆転します。

その原因の1つがサーフィンブームでした。

1970年代、日本の若者の間にサーフィンブームが起こり、そのおかげで、人前で着替えをする機会が増えました。そうなると、パンツが人目に晒されることになります。当然、パンツへのお洒落意識も高まり、その結果、色や柄が豊富なトランクスへ切り替える若者が増えたのだそうです。

また、1981年には深川通り魔殺人事件が起き、これがブリーフの地位転落の要因となりました。事件の犯人が捕まった時、白ブリーフにハイソックスという異様な姿で連行される姿が大々的に報道されたため、ブリーフのイメージが一挙に落ちてしまったのです。白ブリーフのことを「○○(犯人の名前)ブリーフ」と呼ぶ人もいたそうです。

ここまで読んで「?」と思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。今、若い世代を中心に圧倒的に人気のある、あのボクサーパンツが全然出て来ない。

そうなんです。パンツの歴史を眺めると、ボクサーパンツはその姿をほとんど見せていないんですね。なぜかって……ボクサーパンツは、あのブランド「カルバンクライン(Calvin Klein)」がごく最近になって作ったものだからです。

1992年 新登場したボクサーパンツの広告/引用元:Calvin Klein 公式サイト

レトロ感を取り入れたお洒落なパンツとして、1992年、カルバンクラインから発表されたボクサーパンツ。その当時はファンションに敏感な若者たちがターゲットでしたが、人気はまたたく間に広がり、今ではパンツの新スタンダードとして定着しています。

100年以上の歴史の中で生まれ、それぞれに完成されて来たトランクス、ブリーフ、ボクサーパンツ。パンツにこれだけの選択肢がある私たちは、何と幸せなことでしょう。そしてこれから先、どんな新パンツが登場するのか……それも楽しみです。

フリパンライター

稲垣 恒太郎

猫のような好奇心を持つフリーライター。特に、流行っていないものが好き。クラシック音楽が趣味。ウラジミール・ホロヴィッツの大ファン。20代まではブリーフ派だったが、現在はトランクス派に転向。

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