栄光と挫折、夢と現実のギャップに悩んでいた柿添選手。
一社会人としての新たな人生を歩みはじめていた時に偶然参加したフィンの合宿…それがその後の柿添選手の大きな転機となるのでした。

“フィンならば日本代表になれるかもしれない”

フィンスイミング日本代表の柿添選手への単独インタビュー後編です!

単独インタビュー【前編】はこちら

柿添氏はマスターズ水泳(※)の練習の傍ら、フィンの練習も行っていました。そして2012年1月、29歳から“日本代表として世界選手権出場”を目標に本格的にフィンスイミングの練習を開始することになったのです。

筆者:フィンを始めて競泳との違いなどはありましたか?

柿添氏:やはりそのスピードでしょうか。競泳の練習でも足ひれをそれぞれの脚に付けることがあるんですが、フィンの場合あれだけデカい足ひれを付けますからね…かなり速いなと思いました。

筆者:さすがは水中最速競技!…そういえば、競泳現役時代から“ドルフィンキック”が得意だったということでしたが、フィンでも役立ちましたか?

柿添氏:競泳をしていたこと自体は役立った部分も確かにたくさんありましたね。ただ競泳のドルフィンキックが決定的なアドバンテージだったかと言えばそうではありませんでした。
フィンではドルフィンキックが唯一の動力なんですが、そもそも、フィンと僕の学んだ競泳技術ではキックの仕方に大きな違いがあったんです。

筆者:というと…?

柿添氏:競泳の場合、僕が選手として泳いでいた当時は腰の動きだけでなく膝を曲げてキックをするのが当たり前でした。しかしフィンの場合は膝を曲げません。
動力の源になる腰や背筋の力を効率良くフィンに伝えるためにはその方が効率が良いんですね。膝を曲げると水の抵抗も受けますしパワーロスにつながってしまうんです。

筆者:膝を曲げる、曲げないっていうのはかなり大きい違いのように感じます!しかし長年競泳やってきただけに身に付いた技術って忘れることが難しそうですが…。

柿添氏:簡単ではないですけど、フィンスイマーとしてやっていくためには絶対に必要ですからね。大学時代にコーチから褒められた競泳のドルフィンはスッパリと捨てました。

筆者:フィンで速く泳ぐためには競泳の技術を捨てることも必要だったというわけですね。

柿添氏:僕にとってはそうでしたね。

筆者:柿添さんにとっては…というと?

柿添氏:実は今、競泳の世界でも“ドルフィンキックで膝を曲げない”というのが常識になってきたんですよ。

筆者:え!つまりドルフィンに関してはフィンの方が一歩先を行っていた…?

柿添氏:今ではどんなスポーツでも腹筋や背筋などの“体幹”が重要って言われていますけど、競泳界でもそれが常識になってきているんです。フィンに関しては元からそう考えられていたんですね。
フィンの泳法はキックのみに特化していますから当然と言えば当然なのかもしれません。

※『マスターズ水泳』とは
「健康・友情・相互理解・競技」をモットーに生涯スポーツとして水泳を楽しむ競技大会のこと。
現役競技者以外の一線を退いた経験者などが参加するものです。
他の競技でも“マスターズ”と冠される大会は年齢区分がなされ、初心者~中上級者またはリターン(競技復帰者)など幅広く参加することができます。

自身の学んだ競泳とフィンとの間にある違いを認識し、必死に練習に取り組んでいった柿添氏。2013年の日本選手権にて200mで4位、400mサーフィスで優勝・日本新記録をマークし800mでも優勝を収めました。本格的にフィンに打ち込んでから1年、柿添氏は日本代表として世界選手権出場を果たしたのでした!

筆者:たった1年で日本代表!これってかなりスゴイですよね!ただ…その分、練習はかなりキツかったんじゃないですか?

柿添氏:本気で取り組んでからはかなり頑張ったと思います。肉体改造をしたり食生活を改善したり、技術向上をしていったり…生活をフィンに捧げていたと思います。

筆者:生活の全てをフィン中心にする、それは決して簡単なことではないと思いますが、モチベーションの維持などはどうされていますか?例えば目標タイムが合ってそれに向けて頑張る、みたいな?

柿添氏:そうですね…それは人によって色々あると思いますけど、僕の場合はタイムだけだとモチベーションの維持はできませんでした。目標タイムというのはもちろんありますが、毎回良い記録がでるわけじゃないですし…下手したら燃え尽きてしまうかもしれない(苦笑)。むしろ僕の場合は“意図的に練習量を増やす”ことがモチベーションの維持になりました。

筆者:“練習をすること”がヤル気につながるんですか?

柿添氏:例えば自分の行った練習やトレーニングをメモしておくんです。時間の許す限りどんどん詰め込んでいきます。次の日にそれを見て“昨日こんなにやったのか…”とか思ってウンザリすることもあるんですが…最終的には“練習量減らしたらもったいない!”って思っちゃうんですよ(笑)。結果的にそれがモチベーションの維持になりました。

筆者:もったいないお化けが出たら困りますもんね!(笑)

柿添氏:はは(笑)。後はみんなの応援も大きな支えになりました。友人・知人など身近な人の声ってやっぱり力になるんですよ。フィンを教えているキッズたちの期待の目とかを思い浮かべると“頑張って良い姿を見せたい!”と思えるんですよね。

先日の日本選手権にて400m2位、800m優勝&日本記録更新を成し遂げた柿添選手。名実ともにフィンスイミング界のトップに立った彼が“今だから思うこと”とは…?

筆者:今や名実ともに日本のトップ選手!なわけですが、始めた当初と今では何か景色が違って見えたりしますか?

柿添氏:やっぱり色々なことが見えるようになってきましたよ。始めた頃は“速くなって日本代表になる!”“日本記録を更新する!”それがメインでした。でも今は“フィンをもっと広めたい”という意識にシフトしていっています。

筆者:柿添さんご自身だけじゃなくて、自分も含めたフィンというスポーツの未来を意識しているということですね。

柿添氏:はい。まだまだフィンは認知度が低くて大会をやっても観客は少ないんです。だから僕はFacebookやTwitterなどを使って大会があれば告知するし、応援に来てもらえるようにしています。実際、50~60人くらいは友人たちが応援に来てくれました。

筆者:先日の大会でも“カッキーガンバー”って黄色い声援がたくさん飛んでいましたよ!

柿添氏:それはありがたい(笑)。実を言うと泳いでいる時ってあまり応援の声が聞こえないんですよ。でも来てくれたってことがヤル気に繋がるし“せっかく来てくれたのだから喜んでもらいたい、良いところ見せたい”って思えますよね。やはり応援が精神的な支えになることは間違いないです。

筆者:それはモチベーションアップになりますね!

柿添氏:ですね。後は、フィンスイミングを普及させるという意味でも人を呼ぶ・外に向けて発信するって大切だと思っています。例えばこの前来てくれた友人たちも、僕以外の選手も見て“何かを感じてくれたら”“フィンを好きになってくれたら”って思っています。

筆者:なるほど、自分だけじゃなくてフィン全体の盛り上げにもなる、ということですね。

柿添氏:そうなんです!最近は自分が速いだけじゃいけないんだなと思っています。確かにフィンスイマーとしては記録を出して活躍することが喜びですけど、それって自分だけなんですよ。フィンの発展には必ずしもつながらない。
僕ももう32歳になりますから、あと2~3年くらいで引退になると思います。その後に、果たして“何を残すことができる”のか?って思うんです。

筆者:一選手としてだけではなく、フィンスイミング全体のことを考えてらっしゃるということですね。

柿添氏:大げさかもしれないですけど、本気でそう思っています。まだまだ認知度も低く、競技人口も少ないですからね。世界とは大きな差があると思っています。

筆者:具体的にはどのような差があるのでしょうか?

柿添氏:記録はもう全然違いますよ。種目によっては1分近く違う。年齢も世界のトップ選手は20歳~25歳くらいですね。そう考えると…僕はもう32歳ですから、世界的にみればベテランの域になってしまっています。後はフィンを始める年齢にも違いがありますね。

筆者:始める年齢にも違いがあるんですね。

柿添氏:例えば最近はキッズも増えていますが、小4くらいが最年少ですね。でも世界を見ると5歳くらいからすでにフィンをやっているんです。これは大きな差でしょうね。どんなスポーツでもそうですけど、やっぱり早くから始めた方が良いに決まってるんです。

筆者:なぜそのような差が出てきてしまうのでしょうか?

柿添氏:日本フィンスイミング界を取り巻く環境でしょうか。例えば練習環境(※)も良くないですし、教えるコーチたちもボランティア状態なんです。現状フィンで食べていけませんから仕方のないことではあります。
今のところは関わる人たちの熱意だけで成り立っているといっても過言ではありません。技術の継承や世界的視野、さらには将来を考えた場合これは良くないですよね。

筆者:変えていくためにはどうしたらいいでしょうか?

柿添氏:まずは認知度を上げ、競技人口を増やすことだと思います。ドンドン外に向けて発信して“フィンスイミングって面白いぞ”って思ってもらいたい。競技者、指導者、観客、興味を持ってくれる人たち、フィンの裾野を広げることが重要だって思います。

筆者:なるほど。柿添さんがやっているような、例えばFacebookやTwitterなどで発信することもそれに繋がるわけですね!

柿添氏:まさにそうです!一人でも多くの人に知ってもらえることが本当に大切で、それによって例えば子供たちがフィンを始めてくれたらなって思うんです。
フィンスイミングはまだまだ発展途上のスポーツです。今から始めればパイオニアになれるチャンスがあるし、フロンティアできる広大な畑なんです。たくさんあるフィンの魅力を知ってもらって、興味を持ってもらえるように活動していきたいですね。

筆者:フィンスイマーとして、今後の目標はありますか?

柿添氏:先日の日本選手権の800mサーフィスで“日本人初の7分切り”を目指していました。結果それが果たせなかったんですけど、まずはそれが目標で、最終的には6分50秒、40秒まで行けたらと考えています。

筆者:レース後に“切れんかったー”とおっしゃっていたのはそのことなんですね。

柿添氏:はい(苦笑)。7分切りというのはインパクトがあるんですよ。7が6に変わるわけですから数字的にもわかりやすいですしね。実際に観に来てくれた友人らも“ドキドキした!”“緊張で手に汗握った!”という感想を言ってくれました。

レース直後の柿添選手

筆者:日本代表として戦うアジア選手権での目標はありますか?

柿添氏:ずばり、メダルを狙いたいですね!個人は正直厳しいですけど、リレーならば世界でも戦える可能性はあるんですよ。アジアは中国や韓国が別格クラスに強いのですが、銅ならば狙えると思います。ベトナム、インドネシアあたりが日本のライバルですね。

筆者:メダル獲得!記録と同じくインパクトありますね!

柿添氏:ですよね。フィンの普及のためには絶対に良い影響があると思います。“世界と戦えるスポーツ”になればキッズたちも“僕もメダル取れるかな”って思ってくれるはずなんです。結果として若手が増えて日本のレベル底上げになると思います。

筆者:素晴らしいですね!ただ…ライバルが増える可能性も?(笑)

柿添氏:ライバル大歓迎ですよ!(笑)速い選手が増えたら、僕もナニクソ!って必死に練習します。レベルの底上げは日本全体にとってもいいことですし、フィンスイマー柿添武文にとっても刺激になります!絶対に!

筆者:メダル獲得期待しています!

取材当日はお仕事とトレーニングの合間を縫って時間を取っていただくことができました。社会人として日本代表としてお忙しい中、貴重な時間を頂きまして本当にありがたい限りです。

フィンスイマーとして、トップ選手として、指導者として、そしてフィンを愛する一人の男として…柿添選手は熱い想いを秘めていました。

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ご期待ください!


この記事の【前編】はこちら

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フリパンライター

麹町敏郎

WEB媒体を中心にフラフラしている適当ライター。数年前から「フリパンってなんだ?」と興味を持ってたんですが、ひょんなことから中の人になっちゃった!なんてこった!
心癒される話から、キワモノ系までみなさんの心をくすぐるような記事をご提供できればと思います。

ブログはこちら:http://kohjimachi.com/

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